こんにちは
ウメユキです。
製造業やメーカーで働いている人は耳にしたことがあるかもしれない「ファブレス企業」という言葉。現代のビジネスモデルとして続々と様々な企業がファブレス化に動いています。
ファブレス企業、ファブレス経営とはどういう企業を指し、どんなメリットがあるのでしょうか。
実際にファブレス企業に勤めて7年以上のぼくが解説していきます。
ファブレス企業とは
ファブレス企業とは一言で表現すると、生産工場を自社で持たない企業の事を指します。
「Fabrication facility = "生産設備"」+「less = "ない"」となり、ファブレス企業は商品の製造を他社へ委託するビジネス形態をとっています。
一般的にメーカーや製造業であれば自社工場を所有して商品の生産を行うことが多いのですが、ファブレス企業は自社で商品企画や開発した商品を他社で製造してもらい、出来上がった商品の販売を行います。
ファブレス企業のメリット、デメリットとは
ファブレス経営には生産を外部へ委託する特徴がありますが、このビジネスモデルにはどんなメリットとデメリットがあるのか挙げていきます。
【ファブレス企業のメリット】
- 初期費用が抑えられる
- 設備投資が大きく掛からない
- 固定費や人件費が抑えられる
- 企画・開発・営業に注力できる
- 委託先を複数持つことで急な増産にも対応が出来る
ファブレス企業の一番の特徴は生産工場を自社で持たないという点です。
そのため、生産に必要な設備や資材を準備する必要が無く、工場を持つ企業と比べると初期コストとしては断然に抑えられるというメリットを持っています。
工場を持たず、生産は外部へ委託するビジネスモデルの為、生産設備への投資も抑えることが出来るでしょう。
新製品の生産依頼を委託会社へ行う際に新しく設備の購入が必要な場合、生産委託会社はその設備費用を按分して製品原価に含む場合があります。
その場合結果として、新規設備費用は依頼をしたファブレス企業側が負担することになりますが、商品を仕入れる度にその設備費用分のコストを支払うことになるので、一時的に設備購入という大きなお金が出ていくことが防げます。
生産工場を持つという事はその分だけの設備管理費やその他のランニングコストだけでなく人数が多ければ多いほど人件費が掛かってきます。
これらはすべて固定費ですので、業績悪化で生産数量が下がったとしても毎月掛かる経費として基本的に下がることはありません。
工場を持つという事はこれらのリスクを考慮する必要がありますが、自前工場を持たないファブレス企業は生産工程の金銭的リスクはかなり低減します。
上記の固定費がある一定抑えられることで、そのリソースを新しい商品の企画や開発、営業へ注力することができます。
本来生産設備に充てる資金を企画や開発、営業やマーケティングに割り振ることで、
企画提案力の向上
ブランド力の強化
利益の拡大
といった様々なアドバンデージを生み出すことが可能になってきます。
生産委託先を複数に分けて持つことで、急な商品の需要増加でも増産対応することができます。生産委託先が1社しかないと、そういった増産対応は100%この1社に負担が依存するしかありません。
増産数量にもよりますが、1社で相当数の増産対応をお願いしても生産稼働率が既に余裕のない状態だと、増産依頼を受けてくれない、もしくはその分納期が延伸することつながるのです。仮に3社の委託先と取引がある場合はにそれぞれ増産依頼を掛けるとで、1社あたりの負担は増産数量の3割で収まります。
その結果、3社と取引がある場合には増産に対応してもらえる可能性が高くなります。
【ファブレス企業のデメリット】
- 品質コントロールが難しい
- 外注費用が掛かる
- 商品に不具合が発生した際の対応に時間が掛かる可能性がある
生産工程を社外へ委託することで品質の管理が不透明になる可能性があります。
ファブレス企業からお願いをした商品でも、生産委託された会社の技術によっては思い通りの商品で出来上がってこない場合も。
社外という事もあり生産工程への改善が難しい場合も多く、技術力の高い取引先を選定することが必要になってきます。
また、複数委託先に同じ商品の生産依頼を委託すると、A社は高い品質、B社は低い品質と商品の質が安定しない可能性もあります。
工場は設備に対する予算等は抑えられる一方で、生産委託先への支払いする外注費用が発生します。
委託先が負担する設備費用は商品原価へ含まれることがほとんどですので、長い期間外注し続けるほど設備費用分のコストはファブレス企業側の負担に替わっていくのです。
< 例 >
新規設備 100万円
商品原価 1万円 内新規設備の割合が1,000円
新規設備の減価償却(新規設備100万円をペイする)には新規設備分の原価1,000円 × 1,000個の商品を販売する必要があります。
もしこの商品がヒットし1,000個以上を販売、ロングセラーで1,001個目以降の商品はファブレス企業側の負担となり、設備投資を行った生産委託側の利益となります。
商品原価側で抑えられる部分が少なくなるので、利益率を上げようと思うと販売価格を上げるという方法を取らなければならないという事になります。
商品に不具合が発生しリコール等の大きな問題に発展した場合、自社で生産工程を持たない分、生産委託会社への調査依頼が発生します。
自社工場であれば、会社の方針で生産ラインを止めて、不具合調査を最優先に時間を掛けることは容易ですが、社外となるとそういった緊急の対応が難しい場合があります。
生産委託会社も1社のファブレス企業からの仕事を受けていることは少なく、複数社から仕事を委託されてることがほとんどです。
生産ラインも他社商品と共有していることも多く、1社からの生産ラインストップ要請を受けても、他社への供給を止めることはできないので、結果的に対応が遅くなってしまうという事もあります。
ファブレス化しやすい業種、企業代表例
世の中には数多の企業が存在します。
その中で特にファブレスに向いている業種とその業種で有名な代表企業をご紹介します。
半導体メーカー
代表企業例 : Huawei(ファーウェイ)
ファブレス経営を最初に取り入れたのが半導体メーカーだと言われています。
ファブレス企業の半導体メーカーのほとんどは世間一般に名前の出てこないアメリカや台湾、中国の企業が世界シェアのトップにいます。
そんな中でも一度は耳にしたことがあるかもしれない企業が中国のHuawei(ファーウェイ)ではないでしょうか。
スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどを販売する大手通信機器メーカーですが、半導体の開発は自社で行い、チップの製造は外部へ委託するファブレス経営を行っています。
半導体業界は製品の移り変わりが早く、また半導体を作る製造装置も非常に高価です。
これらの半導体製造を請け負っている有名な企業として韓国のSamsung(サムスン)などが挙げられます。
デジタル機器メーカー
代表例:アップル
代表例:キーエンス
iPhoneなど数々のヒット商品を手掛けるアップル、社員平均年収が約2,000万円と年収ランキングの常に上位にいる計測機器メーカーのキーエンスはファブレス企業として有名です。
生産工程を社外に出すことによって、新しい商品の開発に力を入れ、次々にヒット商品を世に生み出しています。
ぼくが働く電気メーカーもファブレス経営を行っており、社外へ商品の製造依頼を行っています。一従業員としてメリットだと感じる事は、複数の取引先と取引することによって、多品種の商品ラインナップを揃えることが可能な点です。
自社工場で規模も小さければ、新しい商品の生産ラインを持つこともできず、特定の商品しか扱えないことにつながるのです。
衣料・アパレルメーカー
代表例:ユニクロ(ファーストリテイリング)
日本最大のアパレルメーカーであるユニクロは自社で商品の企画やデザインを手掛けながら、商品の製造や縫製は生産コストを抑えるために東南アジアへ外注しています。
アパレルの加工や最終的な縫製は人件費の高い日本国内では難しく、中国やタイ、インドネシア、ベトナムといったコストが安い国で行うことが一般的です。
季節によってや、世の中の流行りに合わせて新しいデザインの生産を掛けていく必要があり、社外に多くの取引先を持つことでその対応を現実化させています。
まとめ
世界でも多くの有名企業がファブレス経営で成功を収めています。
ファブレス経営とは自社で持つ限られたリソースを最大限活かすことが出来る経営手法の一つです。ファブレス企業がどんな意味を持つのかを知ることで、自社がファブレス経営に向いているかの判断だけでなく、取引先がファブレス企業であれば事前に自社のメリットやデメリットをイメージできることにもつなげることも可能です。
世の中の成功している企業に学び、自社の発展のヒントにしてみてはいかがでしょうか。